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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-11
少し前の話だ。そのために、あの人の後継になることを決めた、と言ったとき、榛名は困惑した顔を隠さなかった。
自分のために、そんなふうに決められても困ると思っていたのだろうと、今ならわかる。押しつけ過ぎていたなともわかる。
あのときはあのときで、それが自分にできる精いっぱいだと思っていたし、自分ができるのならやるべきだと考えていた。
過剰とも評せそうだった力みが徐々にでもあれ抜けたのは、ひとりで抱え込む必要はないと正面を切って言ってくれる相手がいたからなのだと思う。
「それに、手伝ってくれるんだろ、榛名も」
「それは、まぁ、そのつもりだけど」
腑に落ち切らない様子ながらも、榛名が頷く。今日のことも、たぶんこれからのことも話さないといけないことはいくらでもあるのだろうけれど。
「まだ俺も考えてる途中のことがいっぱいあるけど、今日のことも含めてちゃんと話すから。そうしたら聞いてほしい」
自慢ではないが、昔から小器用になんでもできるほうだった。人を頼るよりも自分でやるほうが楽だし簡単だと思っていた。
そうやって涼しい顔ですべてを成し遂げてしまう人間を、幼いころから間近で見ていたせいもあるのかもしれない。
その姿勢をかっこいいと思っていたし、絶対的に正しいのだと思っていた。でもそれだけではないのかもしれないと気づいたのは、なにも関与できないままでいることのやるせなさを思い知ったからだった。
ひとりですべてをやってしまうことは、周囲にいる人間からすると、いいことばかりでは決してない。
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