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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-15
「最初に引き込んだのは俺だし、その俺が言うのもどうかとは思うけど、なんで急に決めたんだ? 皓太、人前に出るの、そこまで好きじゃないだろ」
話は聞くから、と部屋に招き入れた成瀬の第一声は、それだった。
「まぁ、たしかに」
それはそうだね、と皓太は小さく苦笑して応えた。成瀬の言うとおりで、たしかに好きではない。目立ってもいいことはないと思っていたからだ。率先してリーダーシップを取ろうとするアルファが多いことは事実だし、それを悪いというつもりもない。
ただ、自分は、そういったことに喜びを感じなかった、というだけで。でも。
「水城を抑えるためには、そうしたほうがいいって思った」
「水城くんを?」
「うん、ここ最近の水城を見て、わかった。あいつがしてるのは、選別だって。今の自分についてくる人間と、ついてこない人間とを寄り分けてる」
だから、あんなふうに態度を変えて試していたのだ。朝の通学時間帯に人の目のあるところで匂わせて、どんなふうに噂が広がるのかを見た。そうして、寮で、それで、今日がクラスだ。
「人数は減るかもしれないけど、その代わり、水城のためになんでもできる人間が残る。……そうなったら、よくない手を使おうとする人間もいるかもしれない」
「かもしれない、じゃなくて、いるだろうな」
あっさりと認めた成瀬が、「実際、ろくな名前を聞かないから」と予想を裏付けることを言い足した。
「ろくな名前?」
「そう。皓太の言うところの、水城くんの周りに残ってる人間のほうね。ものの見事に問題児ばっかり」
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