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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-16
嫌そうに苦笑してから、成瀬がふと問いかけてきた。
「なぁ、皓太。なんで、水城くんは『寄り分けた』んだと思う?」
さも思いついたというふうだったが、試されているのだとわかった。こんなふうにされたのは、はじめてだったかもしれない。けれど、だからこそ、皓太は考えて答えた。
「水城、普通科のベータにすごく優しくなったっていう話を、少し前に榛名に聞いたんだ」
「うん」
「そのときは、俺、ベータを軽視し過ぎたことに気づいて、巻き返そうとしてるんだと思ってた。だって、この学園の多数派はベータだから」
「そうだな、選挙もリコールも、結局、数がものを言う」
「でも、……叶わなかったから少数精鋭に切り替えたのかなって」
水城に急に優しくされてうれしく思ったベータもいるだろう。けれど、馬鹿にするなと憤慨したベータだっていたはずだ。その感触を肌で感じて戦法を切り替えたのではないだろうか。
「実際、リコールの署名集めもうまくいってなかったみたいだし」
「それもひとつだと思うよ。でも、もっと大きいのは、本尾に放り投げられたから、じゃないかな」
「本尾先輩に放り投げられたって」
どういうこと、と眉をひそめる。そんな話は知らない。少なくとも、教室で出たことはなかったはずだ。水城もそんなそぶりは一度も見せていない。
「水城くんの同好会、風紀の部屋間借りしてたのは知ってる?」
「それは、うん」
「その取り決め、風紀が解消したんだけど、知らなかった?」
「……知らなかった」
素直に頷いた皓太に、成瀬が年長者の顔でほほえむ。本当に、この人たち、どこからそういう情報集めてるんだろうな、と改めて驚きながら。
――でも、そんな大きな話が出回ってないってことは、本尾先輩たちが隠してるってことだよな。
その理由もよくわからないけれど。
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