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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-18
「あのさ、成瀬さん。成瀬さん、中等部で会長を引くとき、あえて自分の後継になりそうな人を推さなかったよね」
成瀬を慕っていた下級生は何人もいた。生徒会に入りたがる生徒も何人もいた。けれど、成瀬は自分がしてきたことをそのまま受け継がせることはしなかった。
その言動を、清廉潔白だと評する人が大半だった。けれど。
「自分とは真逆、とまでは言わなくても、中道寄りの人が通るようにした。試したんだよね、違う?」
そう聞きながらも、違わないことを確信していた。だから、聞いたのだ。あの当時は気づいていなかったが、今ならわかる。そういうことだったのだ、と。
「この学園は、本当に成瀬さんの思う方向に行くのか、どうか。その一年を試金石にしたんだよね」
余計な口を挟もうともせず、成瀬は黙ってただ話を聞いていた。負けないように腹に力をこめて、続ける。
「それで、俺が会長になって、自分の路線に戻って、それが受け入れられたのを見て、ほっとした」
あの日。生徒会長をすることになったと報告したとき、成瀬はうれしそうにほほえんでいた。年下の幼馴染みの成長を喜んでいるというだけではなかったのではないだろうか。
「違うかな」
静かに皓太はそう繰り返した。
もし本当に違うのなら、先だっての補選の候補に挙がっていたのは、その人であったはずだ。自分が選ばれた段階で、順番をひとつ抜かしている。
思えば、中等部に入学してすぐのころから、遊びにおいでというていではあったけれど、部外者であった自分を生徒会室に招き入れていたのもそうだったのだろう。
だから皓太は、自分が会長になったとき、自然と成瀬のやり方をまねた。それが唯一の手本だったからだ。
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