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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-19

「そんな言い方したら、あの子がかわいそうだろ。ちゃんと一期務め上げてくれたんだから」  ふっと困ったように成瀬がほほえんだ。幼いころから見慣れた、優しげな顔で。 「でも、呉宮先輩言ってたよ。俺に引き継ぐとき。成瀬先輩は、『俺の色を引き継ぐことはない。自分のやりたいようにやればいい』って言うだけで、基本的なことしか教えてくれなかった、って」  非難するような言葉を選んでも、その表情は変わらなかった。その顔に向かって、淡々と続ける。 「あの人の色が抜け切ってない場所で、無茶なこと言うよなぁって」 「そうかな」 「そうだよ」 「じゃあ、そうなのかもな」  あっさりと前言を撤回してから、でも、と成瀬は言い足した。 「厳しい言い方をするなら、俺の色を抜き切ることができなかったのは、あの子の力不足だ。俺は、俺で変えた。ここを」 「……」 「あの子にはできなかったっていうなら、そこまでだったってことだ。違うかな」  そこまでの人を選んでおいて、よく言うよ。そう指摘する代わりに、皓太はまっすぐに見据えたまま、呼びかけた。

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