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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-2

「成瀬さん、残らないの?」 「らしいよ。絢美……じゃない、成瀬さんの妹が言ってたからまちがいないと思うけど。まぁ、今年は受験なわけだし、家で相談することもあるんじゃないの」 「受験……」  言われてみれば、あたりまえの話だった。あの人たちは、来年の今ごろはもうこの学園にはいないのだ。  ――でも、どうするつもりなんだろ、成瀬さん。  望めば、あの人はなんだって選べるだろうし、どこにだって行けるだろうに。  少し前、ここを出てから先の、――未来の話を聞いたことがないと思ったことを、行人は思い出していた。  次の春まで、あと、半年と少し。あの人たちは、そのころ、なにをしているのだろう。 「どうかした?」 「いや、……成瀬さんの妹さんと仲良いんだなと思って」 「仲良いっていうか、いいように使われてるだけだよ。あいつ、俺の前では横柄なのに、成瀬さんの前では猫被ってんの。どっちを実の兄弟だと思ってるんだよって感じなんだけど。あれも一種のブラコンなんだろうな」  ……いや、それを仲良いって言うんだろ。  誤魔化そうと転換した話題だったはずなのに、よくわからないダメージを食らってしまった気分だ。  それはまぁ、成瀬さんの妹さんなのだから、素敵な人なのだろうなとは思うけど。

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