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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-3
手持ち無沙汰そうに壁にもたれかかっている高藤にちらりと視線を向ける。
あの日、――平和主義で根が真面目なこの男が、授業をサボった上に、自分よりも弱い相手からの喧嘩を買う、という、らしくなさすぎることをした日のあとから、少し高藤は変わったように行人の目には映っていた。
行人たちの代、中等部の生徒会長を務めていたのは、高藤だ。その実績が、高藤の能力の高さと人望を如実に表していると思う。
けれど、高藤はそういったことを鼻にかけるタイプではまったくといっていいほどなかった。たぶん、目立つこと自体も、そこまで好きではなかったのだろう。他人に求められると、自分にできることならと応えてしまう性格だった、というだけで。
その高藤が、変わった。と言っても、べつに威圧的な言動を増やしている、というわけでも、偉ぶっている、というわけでもない。
あえて今まで出していなかった強者のオーラのようなものを出すことが増えた。威圧的、とまでは言わないけれど、静かな威圧と言えば、それはそうなのかもしれない。
わからないけれど、でも、以前はそういった空気を抑えようとしていたことは事実で、今は違うことも事実だ。
一目置かれるアルファ、というのを、わかりやすく体現するみたいに。
そして、それはまるで、ただ静かにほほえんでいるだけなのに、王者の風格があふれる、あの人のようで。
そう思えば思うほど、口にはしないものの、行人はもやもやとするものを抱えるようになっていた。
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