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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-6

 たぶん、あの人は、自分の存在感を正確に理解していて、そういった「生徒会長」としての姿を維持してくれていたのだろうと思う。すごいことだとも思う。  行人なんて、感情的になりすぎないようにコントロールするだけで精いっぱいだ。  ――でも、じゃあ、そういう完璧な人って、どこで自分の素を出すんだろうな。  寮生委員会の所属になった行人には、最後に寮の内部をチェックするという仕事が残っていたのだった。  いつも誰かしらの声が響いている寮内も今日は静かで、なんとなく寂しい気持ちになる。高等部に上がってから、まだ四ヶ月しか経っていないのに、すっかり愛着を持ってしまっているらしかった。  無人の一年生のフロアを荻原と点検をして、茅野に問題のなかったことを報告すると、「なら、もう帰っていいぞ」とあっさりとした許可が下りた。  ほかの寮生委員に帰る様子がないことが気にかかったらしく、荻原が問い返している。 「え、もういいんですか?」 「三年と二年で人出は足りているからな。来年はメインでやってもらうことになるんだから、気にしなくていいぞ」 「……なんか聞き覚えのある台詞ですね、それ」 「寮生委員に任命されたことが運の尽きと思って、来年も寮のために尽くしてくれ。というわけで、おまえたちは、今日はここで終わりだ。気をつけて帰れよ」

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