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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-7
そのまま半ば追い立てられるようにして寮の外に出たところで、荻原がちらりとドアを振り返った。はは、という苦笑いじみた溜息つきだ。
「あの台詞、寮に配属されたばかりのころにも言われたんだよなぁ、俺」
寮生委員から逃さないっていう圧力がすごい、と続いた愚痴とも諦めともつかない台詞に、悩んだ末に行人は労わる言葉をかけた。
高藤といい、役職持ちは大変だなぁ、と思ってはいたので。
「荻原のこと信用してるんだろ。おまえ、いいやつだし……って、なんだよ?」
「あぁ、ごめん。榛名ちゃんにそんなにストレートに褒められると思ってなかったから、ちょっとびっくりして」
「……悪かったな」
「なんで? 悪くないよ、うれしいよ。ありがとう」
にこ、とほほえむ顔には、本当になんの他意もなさそうで。毒気を抜かれた行人は、もごもごと「なら、いいけど」とだけ呟いた。
高藤とはまた少し別の意味で、荻原もあまりアルファらしくないアルファなのだった。偉ぶらないし、よく周囲を見て気遣っている。
そういった人間を寮の管理をする側に選ぶ茅野は見る目があるのだと思うし、来年も再来年も続けてくれたら、行人個人としてはありがたいとも思っている。
「榛名ちゃんがそう言ってくれるなら、がんばろっかなっていう気になるなぁ」
「その言い方はどうかと思う」
いいやつだとは思うようになったのは事実だが、軽い物言いは、やっぱりちょっと気に入らない。トーンの下がった行人の声に、慌てたふうに「本当に思ったから言っただけだよ」なんて言っている。
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