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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-9
逃げるが勝ちを選ぶことができるようになったことも、ある種の成長なのかもしれない。自画自賛していると、楽しそうな声が耳に届いた。ちょうど、先ほど行人がいたあたりを通っているらしい。
「――だなぁ。轟くんのお家。でも、本当にずっとお世話になってもよかったの?」
「もちろん。俺から誘ったんだし、遠慮しないでくつろいでって。うち、親も余計な干渉してこないから」
「本当? ありがとう」
「ハルちゃんこそ、本当に一回も家戻んなくてよかった? 荷物とか――、まぁ、必要になったら俺が用意するよ」
「うん、ありがとう。轟くんは優しいなぁ。僕、夏休みがこんなに楽しみなのはじめてだよ」
次第に遠ざかっていく声に、行人はほっと胸を撫で下ろした。とりあえず気づかれなかったらしい。気づかれていたとしても、無視してもらえたのなら、それでいいので問題はない。でも、それにしても。
「水城、自分の家には帰らないんだな」
ひとりごちた台詞が校舎裏に落ちる。漏れ聞こえてきた会話からの判断ではあるけれど、一度も戻らないまま同級生の家に向かう様子だった。
他人ごとながら良いのだろうかと思ったところで、行人は、水城のことは家のことも含めてなにも知らないということに気がついた。
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