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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-10

 噂話には疎いほうだが、それでも中等部で三年間を過ごせば、同級生や目立つ上級生の家のことは耳に入ってくる。 親同士が仕事の関係でつながりがあることもあるし、苗字である程度察せることもある。けれど、――興味がなかったからだ、と言えば、それまでだけれど、水城のその手の話は聞いたことがなかった。  ――まぁ、いいか。  べつに、知らなければいけないようなことではないし、帰らないというのならば、そういう事情があるのだろう。「こんなに夏休みが楽しみ」は、水城お得意のお世辞だろうけれど。 「あ、荻原」  遠くで自分を探している声に、足を踏み出す。できるだけ距離を取ろうとしたせいで、荻原と別れた地点から離れてしまっていたのだ。 「オメガってのは、そんなにアルファをたぶらかしたいものなのか?」  背後から聞こえた揶揄に、足がぴたりと止まる。苦笑の奥には呆れとかすかな軽蔑が混ざっていた。  自分に向けられた言葉だということは明白で、ぎこちなく振り返る。 「本尾先輩」  この人とこんなに近くで顔を合わせたのは、あの日――はじめてヒートを起こした日以来、はじめてだった。条件反射のように、どきんと心臓が大きな音を立てる。

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