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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-14

「べつに責めてるわけじゃない。なにを馬鹿だと取るか、怖いと感じるかは、人それぞれだろうからな。強いて言うなら、水城のほうが厄介だとは思うが」 「厄介、ですか?」 「ああいうプライドばかりが高いタイプは、逃げどころをちゃんと残してやらないといけないから。そういう意味では面倒だな」  なんとなくそれはわかった気がして、行人は頷いた。プライドが高いのだろうということはわかるし、だからこそ、逃げどころがいるということもわかる。  ――あぁ、そっか。  ふと、ひとつ腑に落ちた。あの朝のことだ。なんで水城は態度を豹変させたのだろうと不思議だった。もしかしたら、違うのかもしれないし、ほかに理由もあるのかもしれない。けれど。  成瀬が、らしくないほどの厳しさで逃げ道を奪って言い訳を許さなかった、ということが要因だったのかもしれない。 「自分のプライドが最優先で、それ以外に守りたいものがない、という人間は、いざ負けそうだと知ったときに、とんでもないことをしでかすことがある」  まぁ、でも、と、安心させるように笑って、茅野は話を切り替えた。 「せっかくの長期休暇なんだ。こっちのことは気にしないで、家でゆっくり過ごしたらいい」

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