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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 0-15
はい、と素直に頷くべきのだろうなぁとわかっていたが、不服そうな声になってしまった。
タイミングが悪すぎたのだ。驚異の遭遇率だったと言ってもいい。運が良いと思ったことはないが、あまりにもあまりだった気がする。
「その顔をしたくなる気持ちもわかるが」
その指摘に、思わず眉間に手を当てる。声だけでなく、表情まで険しくなってしまっていたらしい。
「……すみません」
「べつに、これも謝らなくていい。それに、新学期が始まっても、しばらくは大人しいと思うぞ?」
「え?」
「成瀬が泳がせるのをやめたからな」
眉間を押さえたまま、まじまじと茅野を見上げる。その視線を受けて、茅野が笑った。なんでもない、さらりとしたいつもの調子で。
「おまえからすると、本尾や向原のほうが怖く見えるんだろうが、あいつは怖い男だぞ」
「怖い……」
呟いた行人に、それ以上の説明をするでもなく、茅野はただ繰り返した。それが事実だと告げるように。
「おまえが思っているよりも、たぶん、ずっとな」
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