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パーフェクト・ワールド・レインⅥ-9

 思ってもいないことを言って、自嘲する。その声に隠し切れない甘えが滲んでいることにも気が付いていた。 「俺とは違う」  甘え。ここまで落ちて、発露する感情がその程度だ。向原のことを信用していないくせに、ふとした瞬間に、心を開いている風な気配を垣間見せる。  ――だから、性質が悪い。  中途半端な機微に、たらればを感じて、ここまで来てしまった。 「そうだな」  応じる声は、自分でも驚くほど温度がなかった。 「おまえは、オメガだからな。俺とは違う」  はっきりと言葉にしたのは、初めてだった。驚いたように成瀬の顔が上がる。 「おまえはオメガだろう、何をどう取り繕ったところで」 「……向原」 「そのおまえが、なんで今までここで、騙し騙しやってこれたと思ってる」  秘密だ、と交わした他愛もないゲームから、向原が降りなかったからだ。けれど、それも、気まぐれだ。ただの。 「それとも、俺がずっと、おまえの味方だとでも思ってたのか? なぁ、なんでそう思ってた?」  堪え切れず笑みが零れた。成瀬は一度も見たことがなかっただろう、嫣然としたそれ。 「俺が、おまえを好きだから?」

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