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パーフェクト・ワールド・レインxx-6

 行人の性を感づいていたとしても、それを態度に出すことは一度もなかった。ただのベータで居させてくれた。  弱い対象として、見られたことはなかったはずだ。対等でいてくれたはずだ。友人で、だからこそ、困った時には手を貸すのだと。そう言う体を作り続けてくれていた。 「成瀬さん」  好きだったと言う代わりのようにその名前を呼ぶ。残された選択肢はそれしかなかった。ずるい。ずるい。どうしようもなくずるいと思う。でも、もう嫌だと思うことができない。  近くに居ると安心する。それは「同じ」だからと言う理由だけではない。第二の性の所為にされたくない。  本能に振り回されたくないと思っているのもまた同じはずなのに、なんでそんなことを言うのか。言わせてしまったことが辛くて、だから、蒸し返せない。 「俺は、オメガは一人では生きられないなんてことはないと思う」  ぽつりと零された声に顔を上げる。彼の表情はやっぱり何も変わらなかった。 「でも、信頼できるアルファがいるなら。ずっと一緒に居たいと行人が思えるアルファがいるなら。つがいになった方が、きっとずっと生きやすい」

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