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パーフェクト・ワールド・レインxx-7

「……でも、」 「幸せになれる」  それが自明の理だと言うような口調に、行人はまた言葉を呑んでしまった。同種でない誰かに、オメガでない誰かに言われたとしたら、絶対に反発する。いや、同じ性を持つ人間でも、例えば、水城が相手だったらば、頷けなかったと思う。 「逃げたわけでも、負けたわけでもない。運命だったって、だけだ」  ただ、この人の口から、そんな言葉を聞くとは思わなかった。運命の、つがい。そんなもの、本当にあるのだろうか。そんなものに縋らないと、いけないのだろうか。  ――オメガだから。  オメガだから、そうしないと生きていけない。落ち着かない感情がぶわりとあふれ出しそうになるのを堪えて、視線を落とす。自分の指先は、まだかすかに震えていた。 「だから、行人が決めたら良い」  最後通告じみたそれに、行人は笑っていた。それしかないのだと分かっている。でも、嫌いになりたくない。自分を。 「大丈夫」  声はかろうじて震えていなかったと思う。 「大丈夫です。だから、ちょっとだけ、一人にさせてください」

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