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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ②

 ――だから、僕が、失敗するわけなんてないんだ。  きみの目論見が上手くいかなかったときのことを心配している、と知った顔で言われたときは猛烈に腹が立ったが、水城の計画はおおむね上手く行っている。  風紀に軽く扱われたことも腹に据えかねてはいるが、卒業するまでにわからせてやればいいだけだ。  おまえが、価値がないと切って捨てたオメガは、とんでもないものなのだぞ、ということを。 「でもよかったの。轟くんはご家族と過ごさなくて」 「いいの、いいの。親と過ごして楽しいって年でもないし」 「でも、ご親戚とか。おじいさんやおばあさんに会ったりしなくてよかったのかな。僕はうれしいけど、寂しがられていたら申し訳ないなって」  水城には親戚づきあいなどひとつもなかったが、あの学園に通う「いい家」は親戚づきあいや家同士の付き合いを重んじているらしいことは承知していた。 「いや、本当いいんだって」  水城の気遣いに、くすぐったそうな表情を見せる。「いい家」の集まる学園の中でも、それなりのランクに位置していて、本人自身もアルファ。そのわりにはいまひとつパッとしないクラスメイトだが、それも含めて、今の水城にはちょうどいい相手だった。  たまの休息くらい、気軽に転がせる程度でいい。それに、いつもとは違うタイプを手懐けることも悪くない。  目論見が上手くいかない云々のご高説はさておくが、優秀なアルファ以外にも媚を売ることの大切さは身に沁みさせていただいたのだ。 「というか、ちょっと従兄が苦手で。あんまり会いたくないんだよね」 「従兄さん?」 「そう、昔はうちに通ってたんだけどさ。俺が入学してすぐくらいのころに退学になって、だから、今は違う私学なんだけどね」 「ふぅん。退学。うちの高校もそんなことあるんだね」 「なくはないみたいだよ。まぁ、レアケース中のレアケースだったみたいだけど。それと、退学になったのは従兄が中等部のときの話」  中等部、と耳に入ったままの単語を水城は繰り返した。そんな年のころからあたりまえの顔で全寮制の学園に入るなんて、本当にお金持ち。

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