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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑦

「アルファらしく優秀でいろと、徹底的に教育されてきた」 「そうよ」  なにを非難されているのかわからない調子の相槌は、潔くさえあった。 「結果として、良かったでしょう? だから、あなたは、今、あの学園でトップに立てているのではないかしら」  感謝してほしいくらいだわ、ともっともらしい顔でほほえむ。 「でも、それも難しくなってくるでしょうと、そう言っているのよ」  それこそ、いまさらだ、としか思えなかった。ふつうであれば「無理がくる」というのはあたりまえの話だ。けれど、その無理を無理と決して認めようとしなかったのは――。 「そこまで物わかり悪く生んだつもりはないのだけど。もっとはっきり言いましょうか。他人の手で仮面を奪い落されるくらいなら、自分で最高のタイミングをつくり上げて、そこで外しなさいと言っているの」  そのくらいのことはできるでしょう、と呆れたように溜息を吐いてみせてから、それに、と意味深に言葉を続ける。 「ちょうどいい相手もいるじゃない」 「二ヶ月ほど前に、忙しいあなたがわざわざうちに来ましたよね」 「うち? あぁ、陵学園のことね。行ったわよ。いけなかったかしら」 「向原に余計なことを言ったでしょう」

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