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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑨
「そんなつもりはなかったですよ」
振り向くことなく、そう告げて、ドアノブに手をかける。できることなら戻ってきたくなかったことは事実ではあるけれど。
「今度は高藤さんのところ? まぁ、構わないけれど。――あぁ、そういえば、このあいだあなたの言うところの『うち』にお邪魔したときね、皓太くんにも会ったのよ」
飛び出した名前に、堪えきれず振り返る。嫌な感じしかしなかったのだ。
「大きくなっていて驚いたわ。いつまでも小さな子どもじゃないのね。だから、皓太くんでもいいのよ」
「……は?」
「私としては、鼎くんをおすすめしたいけれど。皓太くんも立派なアルファだもの。昔からあなたに懐いていたわけだしちょうど――」
気がついたときには、がん、と壁が大きな音を立てていた。
「冗談でも」
拳を下ろして、成瀬は努めて静かな声を出した。いくら母親とは言え、力で勝ててしまう相手に誇示してしまったような罪悪感がひしひしと湧いてくる。
「言っていいことと悪いことがあるでしょう」
「あなたもそんな顔をするのね」
「……あなたがさせたんでしょう」
「そうね。でも、少し前までのあなたなら、そんな突発的な行動に出なかったのではないかしら」
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