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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑬
――たしかに、潔く認めたほうが賢明なのかもな。
頭に浮かんだのは、家を出る前に聞いた母の台詞だった。ついで、何度も言い諭すように告げられた、つがいをつくるべきだという医師の言葉。そして。
――どうにかしてくれ、とも言われたしな。
一理あると思ったから、茅野にそう言われても、腹は立たなかった。逃げ場のない全寮制の学園に戻る前に、「どうにか」しておいたほうがいいのかもしれない。
そうすれば、あの男に振り回されることも二度となくなる。
「祥くん!」
その声に、車に伸ばしかけていた手が止まった。
「皓太」
振り返ると、走ってきた皓太が小さく息を吐いた。そこでようやく、車にいた相手が誰なのか気がついたらしい。げっという表情を呑み込んで、取ってつけた笑みを浮かべ直している。
「なんだ、一成さんだったんだ。えっと、ひさしぶりです。――あの、祥くん、今日、俺に付き合ってくれるって言ってたよね。忘れちゃった?」
取ってつけたにもほどがある内容に、向こうもまたあからさまに白けた顔になった。
「おまえら、あいかわらずつるんでんだな」
「今も同じ学校に通ってるので」
寮も一緒なんですよ、としかたなく成瀬は愛想の良い切り返しを選んだ。この状況にうんざりしてはいたけれど。場所が悪かったとしか言いようがない。
「ああ、あの全寮制の坊ちゃん学校。よく六年も通ってられるよな。本当尊敬するわ」
「一成さん、全寮制が嫌で、陵選ばなかったらしいですもんね」
昔聞いた覚えのある話を引っ張り出して、そう相槌を打つ。ある程度以上の名家であれば、多少学力が足らなくても、あの学園は裏から入れるようになっているのだ。
今年首席で編入してきた、人一倍プライドが高く努力家な少年には認めがたいことだろうが、それが事実だった。
優遇される人間は、生まれた時点で決まっている。そういうものだ。
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