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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑭

「俺のかわいい後輩なんですよ。だから、いじめないでくださいね」 「ガキのころから言ってること、なにひとつ変わってねぇとか。おまえ、昔からそうやって絢美と皓太、俺に近づけさせたなかったもんな」 「そんなつもりはありませんでしたよ」  にこ、と他意のないことを示すようにほほえんでみせる。折れたのは向こうが先だった。じゃあな、というおざなりな声を最後に窓が閉まる。 「気が変わったら、声かけろよ。遊んでやるから」  走り去った車を見送ると、ぽつりと皓太が呟いた。隠す気のない非難がましい調子で。 「俺、家から飛び出してきたんだけど」 「みたいだな」  見たらわかる、と成瀬は肩をすくめた。する必要なんてないのに、と言わなかったのは、相手が皓太だったからだ。 「たぶんだけど、それ、おばさんのサンダルじゃない?」 「だから急いでたんだって!」  これしか玄関に出てなかったんだよ、とやけくそのように言ってから、上目に見上げてくる。 「……大丈夫?」 「なにが?」  質問で返した成瀬に、むっと皓太が眉を寄せた。学内ではしない、わかりやすく不服そうな顔。 「俺、一成さんのこと苦手だ。でも、その苦手の理由、祥くんも知ってるよね。というか、祥くんもあんまり好きじゃないでしょ。俺に、近づかないほうがいいって言ったのも祥くんだったし」  まぁ、素行の悪い人だったからなぁ、という事実は呑み込んで、困ったようにほほえんで応える。  気ままにオメガに手を付けては、家の金と権力を使ってもみ消し続けてきている、典型的なアルファのドラ息子。

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