729 / 1072
パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑯
「言うつもりなかったんだけど、最近の祥くんはちょっと見てて不安になるときがある」
「不安?」
「さすがに、自覚がないとは言われたくないんだけど。榛名は気づいてないかもしれないけど、俺はわかるよ。向原さんも、篠原さんも、茅野さんもきっとわかるよ」
「……」
「それだけそばにいたんだから」
「うん、ごめんな、心配させて」
「……あのさ」
暖簾に腕押しと思っていることが丸わかりの様子に、「ん?」と聞き返す。困らせたいわけではなかった。
「なにをどう言えば一番祥くんに効くのか、ちょっともうわかんないんだけど。俺とか榛名に泣かれたくないでしょ。泣くよ?」
本当に小さいころにも聞いた脅し文句を真顔で告げられて、駄目だとわかっていたのに、堪えきれず笑ってしまった。
ふっと肩を震わせていると、「ちょっと」と皓太が照れと呆れの混ざったような声を出す。それがまたどうしようもないほどかわいかった。
「こっちは本気で心配してんのに、なに――」
「皓太」
どうにか笑いを引っ込めて、変わらない位置にある頭をぽんと撫でる。いつのまにか、こんなに大きくなってしまった。でも。
「ありがとな。皓太がいてくれて、よかった」
それだけは、偽りのない本心だった。
ともだちにシェアしよう!