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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑯

「言うつもりなかったんだけど、最近の祥くんはちょっと見てて不安になるときがある」 「不安?」 「さすがに、自覚がないとは言われたくないんだけど。榛名は気づいてないかもしれないけど、俺はわかるよ。向原さんも、篠原さんも、茅野さんもきっとわかるよ」 「……」 「それだけそばにいたんだから」 「うん、ごめんな、心配させて」 「……あのさ」  暖簾に腕押しと思っていることが丸わかりの様子に、「ん?」と聞き返す。困らせたいわけではなかった。 「なにをどう言えば一番祥くんに効くのか、ちょっともうわかんないんだけど。俺とか榛名に泣かれたくないでしょ。泣くよ?」  本当に小さいころにも聞いた脅し文句を真顔で告げられて、駄目だとわかっていたのに、堪えきれず笑ってしまった。  ふっと肩を震わせていると、「ちょっと」と皓太が照れと呆れの混ざったような声を出す。それがまたどうしようもないほどかわいかった。 「こっちは本気で心配してんのに、なに――」 「皓太」  どうにか笑いを引っ込めて、変わらない位置にある頭をぽんと撫でる。いつのまにか、こんなに大きくなってしまった。でも。 「ありがとな。皓太がいてくれて、よかった」  それだけは、偽りのない本心だった。

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