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パーフェクト・ワールド・ゼロⅣ⑰

「うん」  なにかを噛みしめるように皓太が頷いた。 「本当だよ。少なくとも、俺は、祥くんのことが大事なんだ。その、ただ、幼馴染みとして」  アルファだとか、オメガだとかそういったことはまったく関係がなく、と言ってくれているのだとわかったから、そうだな、と応えることができた。 「俺も、皓太が大事だよ。けっこう本当に、一番っていうくらい」  アルファではなかったと知ったばかりだった当時、なんの他意もなく自分を慕って好いてくれる幼い存在がいたことは、まちがいなく救いだったのだ。  だから、とまっすぐにその目を見つめたまま続ける。 「学園のことは心配しなくていい。俺がぜんぶ、そのまま皓太に引き渡す」  水城のことも、次の選挙のことも、なにもかもすべてを。それくらいしか返すことはできないけれど、それくらいなら、まだしてやることはできる。  あの学園での自分の最後の役割として、そのくらいのことは、きっと。 「……そういう意味で言ったつもりじゃなかったんだけどな」  言い淀むような間のあとで、皓太が小さく笑った。 「でも、まぁ、いいや、それで、……その、なんというか、祥くんが祥くんらしくいれるなら」  大丈夫、となんでもない調子で請け負って話を終わらせる。 「心配させて、ごめんな」  ――きみは、その学園の王にでもなりたかったのか?  そう問われたとき、成瀬はまともな答えを返さなかった。今の自分がどう思っているのか、よくわからなくなりかけていたからだ。  並みいるアルファを倒して、その頂点に立って、オメガは弱いものではないと証明したかった?   それとも単純に、この世界が嫌いだったから?  だから、アルファもオメガも関係なく生きていけると、主張したかった?  どの思いも間違いなく過去の自分は抱いていた。けれど、もしかすると、ただ救いになりたかっただけなのかもしれないと、そう思った。  誰かにとっての、あるいは、自分にとっての救いに。俺はなってみたかったのかもしれない。

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