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パーフェクト・ワールド・レインxx-9
「茅野にも話は通したし、心配しなくて良いよ」
「それは、このまま祥くんが相手するってこと?」
険のある言い方にも関わらず、成瀬の口調は一切ぶれなかった。
「面倒を看る気がないなら、突き放した方が良いって言ったのは皓太だろ?」
「そう、だけど」
そうではあるけれど。発情期のオメガが一番に求めているのは、薬ではないのではないかと思う。それなのに、成瀬は淡々と続ける。
「だから、俺は何もしないよ」
「俺がこんなことをこのタイミングで口にするのは、ずるいって分かってるんだけど」
「なに?」
「榛名は、祥くんのことが好きだよ、きっと」
なんで、俺がこんなことを言わなければならないのか、と腹立たしいような気にもなって、けれど、自分ではどうともできないとこの人に助けを求めた時点で、それが答えだ。
榛名が求めている誰かは自分ではない。
しばらく応えを待ってみたけれど、彼は何も言わなかった。自分は否定して欲しかったのだろうか。それとも、明確に振ったとでも言って欲しかったのだろうか。
「なんで、急に来たんだろう」
話を変えるように、ぽつりと呟いたそれは、胸に残っていた疑問の一つでもあった。
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