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閑話「プロローグ」⑦

「まぁ、そうかもな」 「……さっきの、おまえらどっちも丸くなったって話だけど」 「ん?」 「俺はすげぇ良かったとは思うんだけど。面倒ごとも減ったし。でも、本尾はちょっとイラついてっかもな」  応とも否とも答えないまま、向原は煙草に火をつけた。改めて指摘されると、どうにも面倒だったからだ。 「本尾と成瀬が合わないのは、まぁ、そうだなとは思うんだけど」  溜息まじりの篠原の声音は、どちらかと言わなくても本尾のほうに同情的に響いていた。 「成瀬のあれがな。無意識だからよけい性質悪いっつうか、もうちょっとどうにかなんねぇかなって」 「あれな」 「そう、そう。悪気はないんだろうけど、あいつ、本尾のこと『かわいそうに』って思ってるとこあるから。本尾が成瀬嫌ってる理由、まちがいなくそれだよな」  ズバリとした感想に、失笑する。「だろうな」 「まぁ、おまえが成瀬のこと特別扱いしてんのが気に食わないってのも、なくはないと思うんだけど。成瀬の態度のほうが原因の比率として圧倒的にデカいだろ」 「まぁ、な」 「それに成瀬が気づいてない時点で、救いようがないっつうか」  まぁ、つまり、と篠原が諦めをたぶんに含んだ調子でぼやく。 「あいつ、変なとこで鈍いよな」  憐憫さえもこもっていそうな総評に、向原はもう一度小さく笑った。

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