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閑話「プロローグ」⑨

 ――まぁ、べつに、潰してもいいんだけどな。  成瀬がうるさがりそうだから、適当なところで捨て置いていたというだけで、その問題児たちがいなくなろうが向原にとってはどうでもいいことだった。  追い出すことも、タイミングさえ誤らなければ、そう難しいことではない。 「あの、……向原?」 「なんだよ」 「すげぇ嫌なこと考えてそうな顔してて怖いんだけど。これ、あいつら追い出せって話じゃないからな?」  勘違いすんなよ、と念を押されて、軽く顔をしかめてみせる。 「おまえのために誰がそんな労力使うかよ」 「俺のためにするとは思ってねぇけど!」  弁明するようにそう言ってから、篠原が派手な髪をかき上げる。その視線もまた委員会室の連なる窓へと向けられていた。 「あいつが絡んでるから、心配してんの。やりすぎんなって」 「……」 「面倒なやつらだけど、適当に共存してくしかねぇだろ。どう転んでもあと四年一緒なんだし」  追い出したら、無駄な我慢する必要もなくなるのにな、と思いながら、向原は灰を叩いた。金網の隙間から舞い落ちていく。 「おまえもそう思ってるから、本尾とずっとそうやってきてんだろ」  そうやって生徒会と風紀とでバランスを取っているのだろう、ということだ。黙ったままでいると、篠原が呆れたように小さく笑った。

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