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閑話「プロローグ」⑮
バレたら大ごとになるとわかりきっていることをやっておいて、なにをいまさら医務室に立てこもっているのか。もう一度扉を揺らしたところで、うしろから声がかかった。先ほどの寮生委員だった。
あれだけ腰が引けていたくせに、中途半端な責任感は持っていたらしい。おおかた、茅野あたりに逃げ出さないように見ていろとでも言われているのだろう。いかにも恐る恐ると話しかけてくる。
「あ、あの、向原先輩。轟先輩たち、ちょっと、その、思ってたより怪我ひどくて」
「襲ったほうが怪我してんのかよ。みっともねぇな」
「まぁ、それは、……でも、ちょっと成瀬先輩もやりすぎというか。いや、なんでもないです!」
なにも言っていないのに、すみませんと謝られてしまって、しかたなく「それで、なんだよ」と話を促す。関係のない人間に当たり散らす趣味はないのだ。苛立ちは募り続けていたけれど。
「それで、その、さっき手当も一応終わったところで」
聞き取りの前に先生の見送りに、という説明を最低限聞いてやってから、向原は視線を扉のほうに戻した。
つまり、中には、目当ての人間しかいないということだ。
「無駄になったな」
「え?」
「茅野には、あとにしろって言っとけ。持ってんだろ、鍵」
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