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パーフェクト・ワールド・レインxx-11

「誤魔化したわけじゃないよ、ごめん。でも、聞いておいて損はない話だと思う」 「榛名がどうやって今までやり過ごしてきたかって言う話だから?」  毎日一緒に過ごしていた自分が分からなかった、気が付かなかったことを、この人は知っていると言うのか。自分への不甲斐なさも相まって、応じる声の険は抜けきらない。当たられている当人は、全く気にも留めていなさそうだったけれど。 「今回は確かに、その薬の服用期間が途切れたことが、行人が倒れた理由の一つだとは思う。でも、じゃあ、その薬を飲んでたら、問題ないのかってなると、また別の問題だ」 「別問題?」 「例えば、頭痛薬を飲んだとして、それで頭の痛みが取れても、睡魔が襲ってくる、とか。そう言った副作用は起こり得る。それと同じなんだ、あの子たちが常用している抑制剤も。それを飲んでいれば、確かに、ベータとして生きることは出来るかもしれない。でも」  言いづらそうに、微かに成瀬が目を伏せた。けれど、それも一瞬で、またいつもの笑みが浮かぶ。場違いなほどにいつも通りの。 「毎日、身体に薬をとり込むんだ。それも何年間も。影響がないほうがおかしい」  榛名がぼうっとしているように見えたのも、時折、情緒が荒れていたのも、あれだけ早起きをする癖に、授業中に眠そうなのも、全部、そうだったのだろうか。自分が呆れたように簡単に注意していた、それは。

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