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パーフェクト・ワールド・ゼロⅢ①
[第三部]
「なぁ、おい。成瀬。寮長である俺が抗議に行くのは何の問題もないんだが、俺とおまえの組み合わせと言うのは客観的に見ておかしくはないか?」
隣を歩く無駄に整った顔が、その言葉を受けて嫌そうに歪む。まぁ、気持ちは分からなくもない、とも茅野は思う。何せ、昨日の今日だ。ほぼ寝ていないのは、櫻寮の生徒のほぼ全員ではあるだろうが。
――とは言え、一番、精神的にやられてるのはこいつか。
榛名を連れてきたのもこの男だったし、昨夜、一番近い場所に居たのもこの男だった。どんな精神力を持っているのか知らないが、発情期のオメガを前にして何食わぬ顔をし続けていた。抑制剤を飲もうが、抑えきれるものではない。それがただのアルファである自分との違いを言われれば、それまでかもしれない。
「俺が会長で、おまえが櫻寮の寮長。被害があったのは学内だったが、原因がアレだ。そう言う意味では、俺とおまえで何の問題もないと思うけど」
「それはそうだが」
溜息を零す代わりに空を仰いで、軽く腕を伸ばす。普段通りの登校時間ではあるが、校舎へ続く道に人影はない。これも昨日の余波なのだろうか。
「風紀に向かうなら、向原が付いて行きたがるだろう、普通」
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