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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-1
[1]
「成瀬さん」
ちょっといいですか、とかけられた声に、生徒会室に向かうところだった足を止めて、成瀬は振り返った。
「行人」
ひさしぶり、と言いかけた言葉を呑み込んで、どうしたの、とほほえみかける。ぱたぱたと近づいてきた行人が、ほっとした顔で胸を押さえた。
「よかった、会えて」
新学期が始まって一週間。来月から本格的に始まる生徒会選挙の準備にかこつけて寮にいる時間を減らしていたから、声をかけるタイミングがなかったのかもしれない。
「ごめんな、最近あんまり寮にいなくて」
「あ、……いえ、ちょっと俺が話したかっただけなので。その、高藤に聞いたら、生徒会室に行くのが一番早いって言ってたから、それで。授業終わったらすぐ来るつもりだったんですけど、ちょっと遅くなっちゃって」
でも、会えてよかった、とはにかんだふうに行人が笑みを浮かべた。その素直さをかわいく思いながら、背後の生徒会室にちらりと視線を向ける。
「生徒会室でよかったら来る?」
「え……」
「今、誰もいないから」
「そうなんですか。あ、……もしかしてすごく忙しかったり」
「いや、まぁ、忙しいと言えば忙しいんだけど。ほら、十月の終わりに選挙があるでしょ。と言っても、俺は今日外に出る予定はないから」
どうしようかと迷っている顔に、おいで、と手招いて歩き出す。少し遅れて着いてきた足音を確認して、成瀬は生徒会室にこもることになった事情を明かした。
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