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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-5

「そっか」 「はい。その、……気を遣うほうが駄目なんじゃないのかなって思って。見下してる、じゃないし、そんなつもりはないんですけど、そういうふうに思われてるかもしれないって思ったら、向こうが絶対に嫌な思いをすると思うから」  すごいプライドが高いんです、と苦笑しているわりには、行人の表情に嫌悪はひとつもなかった。  いつのまにか、そのすごくプライドの高い相手に、随分と心を開いたらしい。はじめて会ったころのことを思うと、本当に行人は変わった。  もちろん、良い方向に。 「いいんじゃないかな、それで」  相談というよりも、本当に報告したかっただけで、ついでに背中を押してもらいたかったのだろうということはわかったから、ほほえんで請け負う。 「行人が休み中にちゃんと考えたことなんだから、それで」 「ありがとうございます」  ほっと顔を緩めた行人が、休みはずっと家にこもっていたから、と言う。 「落ち着いて考えるには、良い時間だったかなって。あんまりひとりでじっくりって、ここだとしづらいので」  同室者がいるうちはそうかもなぁと思いながら、遊びに行ったりしなかったの、と成瀬は尋ねた。ふたつ下の幼馴染みも、遊び盛りの年の長期休暇のはずなのに、暇を持て余していたふうだったからだ。 「皓太でも誘ってやったらよかったのに。あいつ、相当暇だったのか、後半ほとんど俺の家にいたよ」 「え」 「な、驚くよな。まぁ、うちの妹なんかは喜んでたみたいだけど。皓太も行人と遊んだほうが楽しいだろうし、またよかったら声かけてやって」

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