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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-7
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「成瀬、おまえな」
寮五階の談話室に入ってきた茅野は、あからさまに機嫌の悪そうな顔をしていた。まぁ、そういう顔をされるだろうなぁ、と思っていたので、成瀬は苦笑ひとつで本から顔を上げた。
「なに?」
「高藤だけじゃ飽き足らず榛名まで引き抜くとは、寮生委員会になにか恨みでもあるのか、おまえは」
「ない、ない。どっちかっていうと感謝してる」
目の前の席を引いた茅野に向かって、そう首を振る。むしろ、文句くらいは聞いてやらないとと思っていたから、こうして待っていたのだ。
「ただ、皓太があいかわらず行人になにも相談したりしてないみたいだったから」
「だったから?」
「いっそのこと、行人が同じ側に来てもいいのかなと思って」
「よくそこまで自分のことを棚上げにした発言ができるな、おまえは」
呆れきった調子で言われてしまって、だって、と言い募る。棚上げした云々について否定する気はないが、それはそれだ。
「言っただろ、選挙通してやりたいって。そのあとの基盤もちゃんと整えておいてやらないと」
「選挙を通してやりたいという話は聞いたし、俺にできる範囲で協力するとも言ったが」
それにしても、と続いた茅野の声は、やはり完全に呆れきっていた。
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