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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-8
「お膳立てしすぎだ。そこまでしてやらなくても、高藤なら問題なくできるだろう」
「でも」
「あのなぁ、成瀬」
心底嫌そうに、茅野が言う。こんなことを俺も言いたくはないんだが、と嫌な前置きをして、一言。
「おまえ、過保護な兄貴を通り越して、過干渉な母親みたいになってるぞ」
「……」
「煙たがられないうちに改めたほうが、おまえのためだと思うが」
「そこまでのつもりはなかったんだけど」
そこまで言われると、さすがに居たたまれないものがある。言い訳がましくなっても、茅野の追い打ちは容赦がなかった。
「そうか? 新学期に入ってから、以前にも増して、高藤、高藤な気がしていたが」
「選挙もあるし、一年早く出るんだから、その分、教えたいこともあるし」
本当だ。できることは、なんでもしてやりたいと思っている。そのくらいしてやっても問題はないだろう、とも。
――というか、そのくらいしかないしな、もう。
「まぁ、そういうことにしてもいいが」
じっとこちらを見つめていた茅野が、諦めたように溜息を吐く。
「せいぜい嫌がられないように気をつけろ。おまえだって嫌だろう。自分の進む道筋をすべて提示されるのは」
「まぁ、……」
それはそうかもしれないけれど。気をつける、と呟くと、その不承不承さにか、茅野が小さく笑った。
ほかにも寮生はいるはずなのに、学期が変わっても、夜になるとここは静かなままだ。それで良いと思っているのかどうか、自分のことなのに、なぜかよくわからないでいる。
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