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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-9

「一年早くと言えば」 「ん?」 「あいつは、なにも言ってこないのか? 二年の呉宮。中等部のときは、おまえと高藤のあいだで会長をやっていただろう」 「この状況だと、あの子は出てきたがらないと思うけどな」  希望的な観測、というよりは、事実として、成瀬はそう答えた。  三年前、自分が彼を後任に押したことを、必要以上に幼馴染みはマイナスに捉えていたようだったが、それなりにはかわいがっていたつもりだし、可もなく不可もなくやってくれると期待していたつもりだ。  とは言え、夏季休暇前に言われたことを否定するつもりもないのだが。 「良くも悪くも平和主義な子だから。そこがすごく良い子だと思うんだけど。ここまで派手に揉めたところに、顔出したくないんじゃないかなって。……よっぽど誰かに頼まれたら腹くくるかもしれないけど」 「誰か、なぁ」 「そう、誰か。どうだろうな。そうなってくると、ちょっと皓太がかわいそうな気もするんだけど。世話になったって言ってたし。――でも、言っとくけど、さすがに事前に潰すつもりはないからな? 最低限、そこは公平でいようと思ってる」 「本尾が聞いたらひっくり返りそうだな」  こちらのことを常々身びいきが過ぎると批判している男を引き合いに出してから、茅野はこう切り出した。 「榛名がちらりと言っていたんだが、榛名を引き抜いたあとの後任に四谷の名前を出したのも、『公平』のつもりか?」

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