769 / 1072

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-11

「じゃあ……」 「並みいるアルファの中からあえて俺を選んで、卒業するまでのあいだだけ都合の良いつがいでいてくれと、いけしゃあしゃあと頼むことのできるおまえに、配慮を期待した俺が馬鹿だった」 「……」 「気まずそうな顔をするだけの良心はあったようでなによりだ」 「思ってるよ、悪かったとは」 「本当か?」 「……多少は」  本当だ、と強調するように、成瀬はそう繰り返した。  嘘ではない。多少、悪いことをしたかもしれない、と思ってはいる。合理的だったと思っているし、間違っていたとも思っていないが。  ただ、茅野の言うところの、まともな情緒を有していれば、頼まないほうが「ふつう」だったのかもしれないな、とは。  ――べつに、嫌いなわけじゃないしな。  そう、嫌いなわけじゃない。もう六年近くになる付き合いの中で信用もしている。だから、選んだのだ。  それなのに、と心のどこかで思っていたことが、そのままぽろりと言葉になった。  そうであれば、休暇中、あれほど皓太に気を遣わせることもなかったのに。 「でも、本当、おまえ、そういうとこ頭固いよな」 「だから、固い柔らかいの問題ではないと――、成瀬」  なに、とわずかに顔を寄せる。伸びてきた手に鷲掴みにされたと思ったときには、叩きつけるに近い勢いで頭を机に押しつけられていた。  ガン、と鈍い音が鳴る。

ともだちにシェアしよう!