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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 1-13
――でも、そう思われてるほうが、ありがたいはありがたい、か。
正しく誤魔化せていたらしいことに安堵して、言葉を継ぐ。
「口より先に手が出るほうに問題があるだろ」
ついでに言えば、あそこまでしなくても目的は果たせたと思うのだが。その指摘に、決まり悪そうに茅野が目を逸らした。やりすぎた自覚はあるらしい。
「そこは、……まぁ、悪かった」
「いや、べつに本当にいいんだけど」
先ほどよりかは、幾分か感情が乗っている。
けれど、そもそもとして、茅野に腹を立てていたわけでもなかったのだ。ちょうどいいタイミングだと、成瀬は話を切り替えた。
「それで? さっきの続き。なに。さんざん人のことこき下ろしてたけど」
「その前に、氷でも持ってきてやろうか?」
「そういう心配するくらいなら、最初から力加減しろよ」
押さえたままであることが気になったのかもしれないが、いまさらすぎる。正直なところ首もそれなりに痛いのだが、そちらのほうは黙っておくことにして、額から手を離す。べつにどうということはない。
「おまえ最近大人しかったから、先に手が出るタイプだってこと忘れてた。いいよ、べつに。多少腫れても前髪上げなかったら見えないし」
そこまでやることじゃないだろうと思ったことは事実だが、人の地雷なんてそれぞれである。この程度で留飲を下げてくれるなら良しとして、「それで?」ともう一度聞き直した。
「なんの話? 一年生のことなんだろ」
「まぁ、そうだが」
もの言いたげだった表情を改めた茅野が出したのは、四谷の名前だった。
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