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パーフェクト・ワールド・ゼロⅢ③

「同じ認識ならちょうど良かった。俺が出ると面倒だから、茅野が進めてくれたら助かるなと思って」 「おい、成瀬」  おまえ、寮と寮の問題にすり替えようとしていないか、と言おうとして、止めた。  突き詰めたとしても、あまり良い話の流れになる気がしない。 「第二の性、……まぁ、生活態度の乱れと言う話にしても良いは良いが、それで風紀が納得するかどうかは知らんぞ。と言うか、そこで話を収めたいなら、本尾じゃなく、柊の寮長に――」  続けようとした言葉が途切れたのは嫌な予感がしたからだったが、窺った横顔はそれが当たりだと告げていて。 「本尾に何を言ったんだ、昨日、おまえは」 「べつに? ただ、あいつが顔貸せって言ってたから。まぁ、見せるくらいなら良いかなって」  そうか、以外の言葉が出ない。この男に関することについて、培われた諦めの境地だ。本来の役割以上に、面倒なことを押し付けられていると思わなくもないが、成瀬はともかくとして、榛名が可愛い寮生であることは事実だ。  とは言え、と今度こそ深く溜息を吐きたくなった。オメガか。可愛い、可愛くない、差別、差別じゃないの話の前に、区別は必要だ。当たり前だ。  けれど、あまり口にしたくはなかったと思うのも本音だ。 「本尾のことも、学園でのことも、俺が仕切れる範囲ではないが。寮内のことは違う。さすがに、今のままを突き通すことはできんからな」 「茅野」 「分かっているだろう? 昨日の一件で、あいつの性は知るところになったわけで、それは事実だ。そうなった以上、今まで通り、高藤と同室で、と言うわけにもいかんだろう」  かと言って、じゃあ、どうするかとなると、悩むところではあるが。 「昨夜、あれ以上の騒ぎが起きなかったことが奇跡だ」  分かっているだろう、との駄目押しに、成瀬はそれ以上は言わなかった。

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