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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-1

[2]  じゃあ、ちょっと出てきますね、という断りを置いて、先に出ていた成瀬を追って皓太が生徒会室の扉を閉めた、次の瞬間。キャスター付きの椅子に座ったまま近づいてきた篠原が、ふたりしかいないにも関わらず声まで潜めて話しかけてきた。 「あのさぁ」  おまけに、らしくもなくおもねるような言い方をする。 「自分でもすげぇ馬鹿みたいなこと聞いてんなってわかってんだけど、なんか、おまえ、めちゃくちゃ怒ってない?」  その調子で「めちゃくちゃ怒ってない?」とまで言われて、向原はしかたなく目を通していた紙面から顔を上げた。 「どこが?」 「どこがってわかってるだろ。成瀬みたいなこと言うなよ、おまえ」  勘弁してくれと言わんばかりに、篠原の声音のトーンが下がる。 「たしかに、ピリピリした雰囲気も、苛々した雰囲気も一切にじんではないけど。むしろ、どっちかっていうと機嫌良さそうな顔してるけど」 「機嫌良さそうに見えてるなら、それでいいだろ。皓太は安心した顔してたけどな」  ついでに言うと、その幼馴染みの様子に、成瀬も安心したような表情を見せていたが。本当にそういうところばかりが視野が狭い。  おざなりにそう告げれば、皓太はそうかもしれねぇけど、とこれまた辟易とした溜息が返ってきた。 「こっちは、なんだかんだ十年おまえのこと知ってんの。顔見りゃ全部はわかんなくてもなんとなくはわかるんだって。……好きでわかりたいわけでもなんでもねぇんだけど、いや、本当」

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