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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-4

「そのあたり、ちょっと成瀬と通じるもんがある気もするけど……って、あぁ、なるほど」 「なんだよ、今度は」 「いや、俺がはじめ成瀬のこと苦手だった理由それだわ、って五年越しに納得しただけ。あの似非くさい穏やかな笑顔に既視感があったからだ。……言うなよ、これ」  成瀬じゃなくて、和晃さんのほうな、と慌てたふうに念を押されて、言わねぇよ、とゆるく首を振る。  そもそもとして、そんなどうでもいいような話をする間柄でもないのだが。 「マジそうして。本当、俺、あの人無理。人の兄貴に悪いとは思うんだけど。そういえば、成瀬って、おまえの兄貴に会ったことあったっけ?」  その問いかけに、向原は顔を上げた。篠原は、なんの他意もなさそうな顔をしている。実際、ただ思いついたことを口にしただけなのだろう。その顔を一瞥して、呆れたふうに笑う。 「逆に、なんでおまえは、そこまで自分が苦手だって思ってる人間に、わざわざ会わせようとするんだよ」 「いや、ちょっとおもしろいかなって」 「いいお友達だな」  会わせる気はいっさいないという事実を伏せたまま、そう言ってやれば、いや、まぁ、そうだけど、ときまり悪く呟いてから、扉のほうを見やった。

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