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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-10

「うわ、こわ」  呆れ切った調子で篠原が応じたのとほぼ同じタイミングで、水城が振り返った。たった今こちらの存在に気がついたとでもいうように、その顔に華やかな笑みが浮かぶ。 「お疲れさまです。もう、今日は生徒会はもういいんですか? 篠原先輩、寮に戻ってこられるの、いつも遅いですものね」  お忙しいそうだなぁって、心配してたんです、とにこにこと労われた篠原は、いや、まぁ、と微妙な反応だ。  指摘されたばかりとあって、若干バツが悪いらしい。その対応に嫌な顔をするでもなく、水城は隣にいた生徒へと笑顔を向ける。 「あ、ごめんね。ちょっと先に帰ってもらっててもいいかな? ――うん、いいよ、また明日」  一言二言水城と言葉を交わした最後に、自分たちのほうに軽く一礼をして、その生徒は立ち去って行った。  一応アルファであるのだろうに、華もなければ圧もない、ベータと称しても疑われることのなさそうな存在感。  その背中を見送って、似ていないな、と内心で向原は判じていた。似ていない。まぁ、血の兄弟でも必ずしも似ているわけではないのだから、そんなものかもしれないが。 「今の彼、ご存じです?」  同じように立ち去るまで視線を送っていた水城が、そこで振り返った。

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