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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-12

「あのな、水城」 「はい、なんでしょう」 「一応、同じ所属寮の先輩として忠告しとくけど。轟――一年のほうじゃなくて、その一年の従兄のほうな、あんまり関わらないほうがいいぞ。本尾とか長峰の比じゃなく、性質悪いしゲスいから。今ここにいないのが、その良い証拠」  その所属寮で、水城がなにをやっていたのか十分に知っているだろうに、あいかわらず無駄に人のいいことを言っている。  半ば以上呆れた向原とは裏腹に、水城はうれしそうな表情を崩さなかった。 「ご心配、ありがとうございます。でも、僕、嫌なことなんてなにひとつされていませんよ。むしろ、たくさんお話を聞かせてもらえて楽しかったくらいで」 「楽しかったって。……なら、まぁ、いいけど」 「楽しかったですよ。僕はまだここに来て半年も経っていませんから、どんなお話でもすごく新鮮で。特に、僕には縁のなかった中等部のころの皆さんのお話は」  まだこの茶番に付き合うのか、という視線を無視すれば、いかにもしかたないといった苦笑を篠原が浮かべた。そうしてから、水城と一方的な話を止めるように呼びかける。 「あのな、俺ら、実際にその学年に在籍してたの。だから、おまえが『楽しかった』話は、俺ら全員よく知ってる。ついでに言うと、そのとき同じ寮だった皓太もぜんぶ知ってる」 「あぁ、聞きました。榛名くんも高藤くんも同じ寮だったそうですね。昔から仲良しなんだなぁって羨ましくなっちゃいました」

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