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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-13
「仲良しどうのこうのは、この際どうでもいいんだけど、……その、なんだ。水城が聞いたのは、たぶん、あいつが自分に都合よく脚色した話だと思うんだけど、それもべつに、いまさらというか」
だから、と小さい子どもに言い聞かせるように、篠原が言った。
「教えてくれなくても大丈夫」
「……」
「遅くなる前に戻りな。俺もこれ以上、長峰に目の敵にされたくはないし」
水城を適当にあしらいたいときの、篠原の常套句だ。変わらない笑みを湛えたまま、こちらを見つめていた水城がにこりと瞳を笑ませる。
「ありがとうございます。でも、よかったら、またお話に付き合ってくださいね。そうじゃないと、僕、いろんな人にお話ししちゃいそう。すごく寂しがり屋なんです、だから」
構ってくださいね、と念を押すようにほほえんだのを最後に、引き上げていく。その背が視界から消えたところで、篠原が非難がましい視線を送ってきた。
「おまえ、一言も喋んなかったけど。それのどこに聞いてやる気があったわけ?」
「あの手のタイプには、なにも反応しないでやるのが一番効くだろ」
「……俺に余計な負担がかかったんだけど?」
そのせいで、と言わんばかりの口調に、ふっと笑って肩をすくめる。
「それと、単純に聞いてやる気が失せた。想定内すぎて面白味のひとつもない。――あったか? 聞いてやる価値」
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