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パーフェクト・ワールド・エンド0-2

 朝方になって、行人が借りていた部屋のドアを誰かが叩いた。あぁ、もう朝かと思って、ほっとしたような、同時にどうしたら良いのか分からない迷子のような感覚に陥った自分を自覚した。  どんな顔をすべきなのだろう。成瀬だろうか。茅野だろうか。あるいは高藤かも知れない。昨日、浴びせてしまった言葉を思い出して、ドアノブを掴もうとする手が、一瞬竦んだ。  それを誤魔化すように、勢いよくドアを開けた先。立っていた意外な顔に、行人は戸惑いを忘れて瞳を瞬かせた。 「柏木先輩」 「昨日は大変だったな」  表情の明るい寮長と違って、いつも冷静沈着な仮面を外さないクール美人と称されている顔が、微かに緩む。 「あ……いえ、その、俺が迷惑をかけて」  曖昧な表現のまま謝罪をした行人に、構わないと首を振って柏木はドアを閉めた。行人に座るように促して、自身も腰かけると、すぐに話の核心に入った。 「副寮長としての話になるんだが、良いか」 「あの、茅野さんは……」 「茅野なら成瀬ともう学校に向かってる」  珍しい組み合わせだなと思ったのが顔に出ていたのか、柏木が補足する。 「昨日のことで、風紀と話を付けると言っていたから、榛名はもうあのことに関しては心配しなくて大丈夫だ」

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