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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 3-6

「そういうわけじゃないけど」  困ったように、ふっと皓太が笑みをこぼした。 「というか、成瀬さんとたぶん一緒だよ。楽しいこともあれば、楽しくないこともある。生徒会に限らず、なんでもそういうものだと思うし」 「うん」 「ただ、生徒会に入ると格段に忙しくはなるだろうから。あいつ、けっこう授業についていくので必死なところあるし、負担じゃないかなとは素直に思う。……言わないけど」  たしかに、皓太が言えば、行人は反発しそうだ。苦笑いにあわせて、成瀬も小さく笑った。当人からすればじれったいばかりかもしれないが、行人の頑なさもプライドも、そうしてそれをわかった上での皓太の気遣いも、どれもすべてかわいく見えてしまう。 「それに、余計な注目も浴びることになるし」 「それだけ?」  ちょうどいいタイミングだと、苦笑をおさめて成瀬は静かに問い重ねた。 「選挙のほうでも気になってることがあるんじゃないのかなって思ってたんだけど。違った?」 「……違わなくはないけど」  どう言えばいいのか悩むように逸れた視線が、手元の書類のほうに落ちる。 「こういうこと言うと、なんか情けないんだけど」 「うん」 「夏前にも成瀬さんに大見得切ったのになって。でも、なんていうのかな、ほかの誰が出てもいいけど、とくに俺と同じ学年のやつは」  視線を外したまま、でも、と皓太は言った。 「二年生は、ちょっとやだな。もちろん、俺がやることは変わらないけど」

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