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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 3-11

「はい、はい。悪かった、悪かった。それにしても、おまえらはおまえらで最近べったりだな。いくら教えることがあるからって」 「その言い方は皓太が嫌がりそうだな」 「見たまんま言ってんだよ」 「まぁ、小さかったころはね。このくらいよく一緒にいてくれたけど。どっちにしろ、あと半年だし」  もう小さくはなくなるのだから、こんなふうに過ごすことができるのも、この時間が最後だろう。苦笑いで受け流して、「それで?」と成瀬は問い返した。 「皓太追い出して、なにが言いたかったの」 「向原に用事があったのは嘘じゃねぇし。おまえはおまえで人聞き悪いな」  皓太が使っていた机の縁に浅く腰かけた篠原が、広げていた書類を一瞥してから、小さく溜息を吐いた。なにがあったのかは知らないが、やけに疲れたふうでもある。 「おまえさぁ、皓太のことやってやってんのはいいけど、あいつのほうはどうする気だよ」 「あいつ?」 「向原に決まってんだろうが。あの機嫌の悪さ、どうにかしてくれ。マジで胃に来る」 「胃に来るとまで言われても。べつにそこまで問題ないと思うんだけど。気にしすぎじゃない?」  つい先ほど、「ふつう」だという話を皓太としたばかりだ。 「気にしすぎじゃないって、見りゃわかるだろ。あのクソみたいな機嫌の悪さ。俺が知る限り、めったにないレベルの機嫌の悪さなんだけど」

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