812 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 3-16
「言ってたな。まぁ、べつに、いいんだけどな、俺も。これもおまえが言ったとおりで、どうせ、あと半年だ」
あと半年、という言葉に、成瀬はまた小さく笑った。
物理的に家と距離を取ることができるあいだに変わればいい、と知った顔で示された隔離期間は、過ぎてみれば案外と早かったような気がする。残り少なくなったとは言え、気を抜くつもりはいっさいないけれど。
「まぁ、もし、またなにかあれば、あと一発か二発くらい鼻っ柱折ってもいいかなとは思ってるけど。俺たちが卒業したら、ここはある程度落ち着く。そうしたら、皓太で十分対応できる」
「それはそうかもな」
「だろ? とは言っても、実はめちゃくちゃ避けられてるんだけどね、俺。九月になってから、一回も水城の顔見てなくて」
「あぁ」
嫌そうな声に、寮で顔を見る以上の接触があったことを知る。
「なに言われたのか知らないけど、気にしなくていいよ」
強がっているつもりはひとつもなく、ただ本心だった。
「俺が気にしないから」
「おまえはな」
「うん。でも、そもそもだけど、俺が気にしないんだったら、それで問題ないと思うんだけど。違う?」
違わない、と篠原が思っているだろうということは知っている。余計な世話だと思っているが、まともな人間が有する気遣いなのだろうないうこともわかる。
そういうところが、篠原にしろ、茅野にしろ、真っ当なのだろうとも思う。
ともだちにシェアしよう!