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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-1
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かすかに聞こえた不安そうな声に、向原は足を止めた。
違うんです、やめてください、と必死に訴えている調子のそれには聞き覚えがあった。同じ寮の一年生のものだ。
姿は見えないが、声の感じからいって相手はふたり。この先にあるのは、人の出入りの少ない文書庫だ。
とは言っても、まだまだ日の高い時間で、ついでに言えば、まだ授業が終わってさえいない時間ではあるのだが。
――違うんです、ね。
連れ込まれるほうにも問題はあるとしか自分には思えないのだが、その理論で納得したがらない人間がいる。
面倒だが、貸しを増やしておくにはちょうどいい。そう割り切って、ふらりと声の聞こえたほうに足を向ける。
それなりに落ち着いていた学内が不安定になり始めた最初のきっかけは、堂々とオメガと宣言して編入してきた人間の存在だろうが、ここから先は、また少し次元が変わる。
それを、本当に理解しているのだろうか。大局を見ているような顔をして、壊滅的に視野の狭い、あの男は。
あまり考えると、必要以上に乱暴な仲裁をしてしまいそうだ。切り替えたところで、予想どおりの顔ぶれが視界に入った。三年がふたりに、その背に隠れてほとんど見えないが小柄な一年がひとり。
呑気なことに、第三者が現れたことに気がついていないらしい。その背中におざなりに声をかける。
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