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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-2
「やめとけ」
連れ込まれる隙を見せるほうも悪いと思っていることも事実は事実だが、同時に、よくこんな面倒なことをやるな、とも思っていた。
やりたいだけなら、適当にやらせてくれる相手を見繕ったほうが、お互い合理的だろうに。
「なんだよ」
振り返った三年のうちのひとりが、邪魔をされたという感情を隠さないままに、そう告げてくる。
「こんなことに首突っ込んでこねぇくせに。成瀬になんか言われたんだろ」
おまえ、あいつの言うことは聞くからな、と吐き捨てられて、向原は薄く笑った。
「たしかに、うちの会長は、もめごとも暴力沙汰も嫌ってはいるけどな」
自分でやる分には好き放題しているような気はするが、それはそれだということにしておいてやるしかない。そのこと自体は、べつにどうでもいいのだが。自分はそうではないと匂わせたまま、淡々と言い切る。
「その意に沿ってやってるうちに、やめとけって言ってんだよ」
勝てない喧嘩を買う人間は、そう多くない。案の定、かたちばかりの捨て台詞を残して、ふたりが立ち去っていく。
――まぁ、勝てる勝てない以前に、逃げたら負けだって思い込んでる馬鹿もいるけどな。
そういった高すぎるプライドは、自滅を呼ぶだけだと思うのだが。
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