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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-4

 面倒だったのだ。どうでもいいはずのことに口を出してしまった自分の言動を含めて。これはもう、泣かなかっただけマシだと思うしかない。  他人の助けを借りないと生きていけないような人間は嫌いだし、他人の助けを当てにして生きている人間も嫌いだ。  自分の安全くらい自分で保証すべきだろうと思うし、保証できないのなら、なにかあったとしても本人の責任だろう。  ずっと、そう思って生きてきたし、それが正しいと今も思っている。そのはずだったのだが。  ――頼られたい、か。  そんなふうに思っているように見える、と言ったのは、高等部に入る前の篠原で、そのときの自分は一蹴した。けれど、今、同じように一蹴できるかと問われると、どうだろうかと思ってしまう。  まったくもって、馬鹿らしい話だ。    最近の学内は、かつてほどではないにせよ、たしかに少し荒れている。 「寮長として礼を言ったほうがいいのか? それとも所属寮の最上級生としてあたりまえのことをしただけだと思っていたらいいのか?」  夜半に寮に戻ってきたところを引き留められて、階段を上り切ったところで向原は立ち止まった。 「あいかわらず地獄耳だな」 「四谷が自分で言ってきたんだ。ご迷惑をおかけしました、ということらしいが。おまえにしては珍しく余計な口を出したみたいだな。落ち込んでいたぞ」  気の毒に、と茅野は苦笑していたが、こちらを咎めようとしているまでのそぶりはない。咎められるもなにも、それこそ口を出されるいわれのないことではあるが。

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