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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-5

「べつに」  そう応じて、廊下の壁に背を預ける。消灯の時間を過ぎた寮内は、しんと静まり返っていた。 「馬鹿すぎて、目に余っただけだ」 「まぁ、そう言ってやるな。四谷にしては珍しいと思ったが。おまえは知らないかもしれないが、元来、機転も利くし、危機管理はしっかりしているタイプなんだ」  あれのどこが、と呆れていることが伝わったらしく、早々に茅野は話題を切り替えた。所属寮の下級生というだけで、見る目が甘くなるらしいのだから、どうかしている。 「それに、どちらかと言うと、俺は、絡んでいた三年のほうにそう言ってやりたいが。誰だったんだ? 四谷は名前は知らないと言っていてな。見当はついたが、おまえから確認しておきたい」 「聞いてどうする気だよ」 「寮生委員会の立場から、俺も釘を刺しておきたいだけだ。本尾が釘を刺さなくなったからな」  そういう意味では助かっていたんだが、と続いた過去形のそれに、向原は名前を伝えた。中等部にいたころから、不良ぶっていた集団のうちのふたりである。  またかとばかりに、茅野が頭を振った。 「そいつらにはしっかりと釘を刺すから、まぁ、いいとして。あいつの常とう手段だな。校内を荒らしたいときは、締め付けを緩めて不良を好きにさせる」 「まぁ、そうだな」 「自分はなにもしてないというていを成立させているところも含めて、趣味が悪い」

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